日本と海外でのオーディオブック文化の違い
■ 同じ「聴く読書」でも、根づき方はかなり違う
オーディオブックは、日本でも少しずつ身近になってきました。
通勤中に聴く、家事の合間に流す、寝る前に数分だけ楽しむ。そんな使い方をする人が増えています。
ただ、海外と比べると、オーディオブックの“文化としての根づき方”はかなり違います。
結論から言うと、
海外、とくに英米ではオーディオブックはかなり一般化した読書インフラで、
日本ではまだ成長中の新しい読書スタイルという位置づけが近いです。アメリカでは2025年調査で成人の51%がオーディオブックを聴いた経験があり、2024年の売上は22.2億ドル、しかも売上の99%をデジタル音源が占めました。英国でも2024年のオーディオブック売上は2億6,800万ポンドで、前年から31%増の過去最高でした。いっぽう日本では、インプレス総合研究所の2025年調査で利用率は9.4%、利用意向は21.0%とされていて、拡大傾向ではあるものの、まだ英米ほどの普及段階には達していません。
この違いを知っておくと、日本でオーディオブックがこれからどう広がっていくのかも見えやすくなります。
■ 海外では「新しい読書法」ではなく、かなり普通の選択肢
日本だと、オーディオブックはまだ
「忙しい人向け」
「スキマ時間活用」
「活字が苦手でも読める方法」
として紹介されることが多いです。
もちろんそれ自体は間違っていません。
ただ、英米ではもう少し広く、本を楽しむ普通のフォーマットの一つとして扱われています。アメリカでは2025年のAPA調査で成人の51%が聴取経験あり、非利用者の関心も38%まで上がっています。さらに63%が「自分の使いたいライブラリアプリで聴けること」を重要だと答えていて、図書館アプリ経由でのアクセスも文化の一部になっています。
ここが大きな違いです。
日本では「便利な新習慣」として語られやすいのに対して、海外では
紙・電子・音声が並ぶ“読書の三択”の一つ
として自然に選ばれている印象があります。
■ 日本は「通勤・家事の時間を読書に変える」文脈が強い
日本のオーディオブック文化を語るとき、かなり目立つのが
移動・家事の時間をどう活かすか
という発想です。
オトバンクの調査では、利用シーンの1位は「通勤・移動中」で81.8%、さらにユーザーの75.1%が「移動や家事が読書時間に変わった」と答えています。別の2025年調査では、日本でのオーディオブック認知度は59%、利用意欲ありは42%まで伸びており、その理由として「ながらで読書ができるから」が目立っています。
つまり日本では、オーディオブックが
“読書文化の拡張”というより、“時間不足を埋める解決策”として広がっている
面がかなり強いわけです。
これは日本らしい広がり方だと思います。
読書そのものが好きな人だけでなく、
「本を読みたいけど時間がない」
という人の受け皿として伸びているからです。
■ 海外は「市場の大きさ」と「流通の厚み」が違う
日本と海外の違いは、単に利用者数だけではありません。
市場の成熟度もかなり違います。
アメリカでは2024年売上が22.2億ドルまで伸び、デジタル音源が売上の99%を占めています。英国でもオーディオブックは出版成長の牽引役の一つになっていて、2024年は31%増でした。さらに米国の公共図書館調査では、デジタル音声の貸出が物理メディアを大きく上回り、多くの図書館でデジタル音声の circulation 増加が続いています。
この差は大きいです。
海外では、
- サブスクで聴く
- 単品で買う
- 図書館アプリで借りる
という複数の入り口がかなり整っています。
日本にも配信サービスはありますが、文化として見るとまだ
「一部の人が便利に使うサービス」から「多くの人が当たり前に選ぶ読書フォーマット」へ向かう途中
という印象です。
■ 日本は“実用”寄り、海外は“娯楽と読書体験”の比重も大きい
ここは少し傾向の話になりますが、日本ではオーディオブックが
「学び」「教養」「自己投資」
と結びついて語られやすいです。理由の一つは、通勤や家事のスキマ時間活用という文脈が強いからです。
一方、英米では市場データを見ると、売上面では一般フィクションが最大ジャンルで、英国でもフィクションの伸びが大きく、オーディオブックの成長と一緒に語られています。つまり海外では、オーディオブックが
“勉強のための便利ツール”だけでなく、“物語を楽しむメインフォーマット”としても強い
わけです。
この違いは、今後の日本市場を見るうえでも面白いポイントです。
日本も今は「効率」から入る人が多いですが、利用者が増えるほど、娯楽としての音声読書も広がっていく可能性があります。
■ 文化の違いは「読書観の違い」でもある
日本では、今でも
「本は目で読むもの」
という感覚が強めに残っています。
だからオーディオブックは、便利ではあるけれど少し“補助的”に見られることがあります。
けれど海外では、少なくとも英米の普及データや図書館利用の広がりを見ると、オーディオブックはかなり正面から“読書の一形式”として受け入れられています。
この差は大きいです。
日本では「時間がないから仕方なく聴く」に寄りやすい。
海外では「内容に触れられるなら、それも立派な読書」という発想が強い。
どちらが正しいというより、
オーディオブックに何を求めるかの文化差
があるんだと思います。
■ これから日本で広がりそうな方向
今のデータを見る限り、日本はまだ伸びしろが大きい市場です。利用率9.4%、利用意向21.0%という数字は、すでに一定の土台がありつつ、まだ普及余地がかなりあることを示しています。さらに認知度59%、利用意欲42%という調査結果もあり、「知ってはいるけれど、まだ本格利用していない層」が厚いことが見えてきます。
今後はおそらく、
- 通勤・家事用途の定着
- 目が疲れやすい人や活字が苦手な人への広がり
- 小説・エンタメ系の強化
- 学習用途と娯楽用途の両立
このあたりが進むはずです。
特に日本では、まず「時間不足の解決策」として入り、そこから
「普通に面白いから聴く」
へ移る人が増えていく流れになりそうです。
■ まとめ:海外は“定着済み”、日本は“伸びる途中”
日本と海外のオーディオブック文化の違いを一言でまとめるなら、こうです。
- 海外:かなり一般化した読書フォーマット
- 日本:便利さを入口に広がっている成長中の文化
海外では市場規模、利用率、図書館流通まで含めて「普通の読書インフラ」に近い。日本では、通勤・家事・スキマ時間の活用を軸に広がりながら、これから娯楽としての厚みも増していく段階です。
だからこそ、日本では今ちょうど面白い時期でもあります。
「忙しいから使う」から始まって、
気づけば「聴く読書そのものが好きになっていた」。
そんな人が、これからもっと増えていくのかもしれません。

